キツネの教え №202

キツネの教え
平成25年6月17日



                                  キツネの教え           
 
 先日、箱根にある「星の王子さまミュージアム」の支配人様から「星の王子さま」出版70周年の今年、記念の企画が好評を頂いて若い人たちがたくさん訪れて下さっています、とお便りを頂きました。若い人たちが自分の生き方を求めてミュージアムを訪れてくれることに私も嬉しさを禁じ得ません。是非、それぞれに大切なものを探して頂きたいと思います。
 
 ところで、大切なこと、と言えば、「星の王子さま」に有名な言葉がありますね。第21章、キツネとの別れの時にキツネが王子さまに教える秘密、「いちばんたいせつなことは、目には見えない」という言葉です。実はこの言葉こそ、作者サン・テグジュペリが「星の王子さま」で一番言いたかったことではないでしょうか。
 
 皆さんはこの言葉をどのように理解されるでしょうか。このことについて、大江健三郎さんが興味深い話をされているのを聴きました。大江さんによれば、現存する「星の王子さま」の原稿四稿のうちの一つが、サン・テグジュペリ自身によって「大切(important)なこと」が「本質的(essential)なこと」に直されているというのです。
 
 とすると、先ほどの言葉は「いちばん本質的なことは、目には見えない」となります。これは第24章に出てくる「こうして今見ているものも、表面の部分でしかないんだ。いちばん大事なものは、目には見えない」という「僕」の言葉に符合します。作者が言う大事なこと、大切なこと、とは本質的なことを指していると言えましょう。
 
 私は「大切なこと」を「本質的なこと」と改めた時、サン・テグジュペリが、般若心経に言う「空観」に到達したのだろうと思われてなりません。いつぞや私は「空とは神仏の現われ」と申し上げましたが、一切万物の本質は神仏であり、神仏の現われであると思います。しかし、私たちが日常目にしているのは、その現象でしかありません。
 
 その現象に潜む本質は、キツネの言うように「心で見なくては」見ることが出来ません。それが「本質」なのです。私たちもキツネの教えに従って現象の本質を見ることができるようになりたいと願ってやみません。


 


                峯の色 渓の響きも みなながら 
                        我が釈迦牟尼の 声と姿と
                         道元禅師





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