土用の教え №211



土用の教え


平成25 718         


 先日、「庭木を剪定したいのですが土用はいつからでしたか」と尋ねられました。そういえば、今年はこの19日が土用の入りです。最近、土用と言えば夏の土用ばかりが土用と思われるようになってしまいましたが、土用は夏だけのものでなく、春にも秋にも冬にもあることはご存知だったでしょうか。

 と申しながら、余談になってしまいますが、夏の土用で真っ先に連想するのがウナギではないでしょうか。土用の丑の日にうなぎを食べるのは、江戸中期のマルチタレント、平賀源内が仕組んだと言われていますが、万葉集に歌があるように、わが国にはすでに奈良時代から夏痩せにはウナギという習慣があったようです。

 ま、それはともかく、暦の考えで言えば、土用には土普請、土いじりを避けるということになっています。申し上げましたように、土用は年四回、立春、立夏、立秋、立冬の前日までの18日間が当てられておりますが、これは中国の五行思想に基づき、土の気が盛んなこの時期は土を侵すことを控えることにしたのです。

 土用の「用」には「はたらき」という意味があります。土のはたらきが盛んな時に、人がそこに棲む動植物、昆虫を初め、微生物に至る一切の生物の活動を妨げないというのが、土用中に土木作業を慎む本意であります。土中の生物の活動は土用ばかりではないでしょうから効果という点では疑問視する向きもあるでしょうが、私は大事な考えだと思います。

 この地球は人間だけのものではありません。動物、植物、鳥、虫、微生物もこの地球の生き物です。しかも、人間はこれらの生物なくして生存できません。地球上の生物は共存共栄の関係にあるのです。そこに思いを致し共に生きることを改めて意識するのがこの土用の教えではないでしょうか。人間の奢りはやがて人間を破滅に導くのです。



 前述したウナギはこのよい例かも知れません。いまウナギの漁獲量が激減して土用ウナギは高根の花になりつつありますが、これを惹起したのは私たちの欲です。人間は人間だけで生きているのではなく、多くの生物と共生していることを土用の教えに学びたいと思います。
 

   ミミズだって オケラだって アメンボだって
     みんな みんな生きているんだ友だちなんだ
             ~「手のひらを太陽に」~


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