平成25年10月18日
アンパンマン
この13日、漫画家のやなせたかしさんが亡くなりました。94歳ということでしたが、漫画家としても詩人としても、最後まで一生懸命なお方でありました。やなせさんは生前、年下の手塚治虫さんを尊敬されていたそうですが、それはひとえに手塚さんの人生に対する誠実な態度への敬意であったと言います。やなせさんもまた同じように誠実な人生でありました。
やなせさんと言えば、すぐに誰しも「アンパンマン」を思い浮かべると思います。放映開始は1973年だそうですから、もう40年になります。しかし、そのアンパンマンは今なお子どもたちの人気キャラクターとして愛され続けています。私自身はアンパンマン世代ではありませんが、調べていて共鳴するところがありました。
アンパンマンには「アンパンマンのマーチ」という、やなせさんが作詞した歌があります。この中に「何のために生まれて何をして生きるのか」という歌詞がありますが、やなせさんは「これはアンパンマンのテーマソングであり、僕の人生のテーマソングである」と言われています。やなせさん自身、長い間自分が何のために生まれたのか分からなかったと言われるのです。
そのやなせさんが、アンパンマンにたどり着いたのは、兵士としての戦争体験でした。食糧がなくて雑草を食べた経験から「行軍したり泥だらけになって這い回ったりするのは一晩寝れば何とかなる。ところが飢えはどうしても我慢できない。食べられないというのは、ものすごくきついですよ。飢えれば人間だって食べようという気持ちになるんだから…」と言われるのです。
実にアンパンマンの誕生には戦争による悲惨な体験と飢えの苦しみがあったのです。やなせさんは「逆転しない正義とは献身と愛だ。それも決して大げさなことではなく目の前で餓死しそうな人がいるとすれば、その人に一片のパンを与えることだ」と言われています。最後は自分の体まであげてしまうというアンパンマンの原点はそこにあるのです。
「アンパンマンのマーチ」を読んでいて、やなせさんがその歌詞の行間に、どれほど戦争と平和の悲惨と尊さを訴えているかを改めて知りました。平和を守るのは私たち一人ひとりの心です。私たち一人ひとりの平和への思いと祈りです。やなせさんの敢闘の人生に敬意を表し、感謝してご冥福をお祈り申し上げます。
手のひらを太陽にすかしてみれば
まっかに流れるぼくの血潮…
やなせたかし「手のひらを太陽に
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