西・東雑考 №266

西・東雑考 №266
平成26年 6月 1日



 西・東雑考
 先日、水子さんの台座に鳥の巣が置かれてありました。恐らく木から落ちた巣をどなたかが見つけて置いてくれたのでしょう。どんな小鳥がその巣を作ったのかは知らず、実に見事な作りでした。シュロの毛のような細い繊維を編むように積み上げ、ちょうど鶏の卵一個が収まるほどのカゴになっているのです。
 
 その見事な細工を見ていて思い出したことがありました。「西」という字です。この字はカゴとかザルを表わした象形文字ですが、これに木へんを付けた「栖」という字があります。音は「セイ」、訓は「す」とか「すむ」ですが、原義は「ザル状の鳥の巣」です。「西」に木へんを付けた「栖」は「木の上の鳥の巣」という意味になるのです。
 
 話はそれますが、それでは「西」が、なぜ方角を表わすことになったかと言えば、ザルの水がさらさらと流れ去るように日の光や昼間の陽気が抜け出て行く方向、つまりは日が沈む方向を表わすことになったというのです。本来ザルを表わす文字が、方角を表わす文字になったとは誠に面白いではありませんか。
 
 話はさらにずれますが、「東」という字を「木の向こうに日が昇って来たこと表わす合字」と習った方がおいでと思います。実はこれは誤りなのだそうです。「東」は中心に棒を通し、両端(上下)をキャンデーのようにしばった袋を表わした象形文字。その「東」が太陽の昇る方角を表わすことになったのは仮借(意味の違う同音の漢字を借りてあてる)というのです。
 
 これには皆さんもへぇーっではないでしょうか。私もずっと「東」は木の向こうに上る太陽(日)、それで東、と思っていたのです。で、話はまたさらにずれますが、先達てKさんが面白い記事がありましたと新聞の切り抜きを下さったのです。そこに「ひがし」と「にし」の「し」は「風」を表わす、と書かれていたのです。
 
 これにも思わずへぇーっ。で、広辞苑を引きましたら、何と「東」「西」「南」「北」、いずれも方角の意味に続いて、二番目にはそれぞれその方角から吹く風、とあるのです。東と言えば東風、西と言えば西風の意味にもなるのです。東風は「こち」、南風には「はえ」という言い方もありますが、方角がそのまま風を表わすとは…、でした。


        意外に気づくことが人生である。
        なぜなら意外こそ真実だから。
                住職ネコちゃん









 
 

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