平和を祈る №279


平成26年8月15日 
平和を祈る

 今年、2014年は終戦の年から数えて69年になります。いまなお世界は戦争や内戦、民族抗争が絶えませんが、日本はこの69年間、戦争による犠牲者を出していません。戦地での活動中に亡くなった人はありますが、日本が戦争の当事国となって他国の人の命を奪ったことも日本人が殺されたこともありません。これこそ国際平和主義を掲げた憲法のお蔭です。

 しかし、今年この憲法の平和主義が大変な危機に直面することになりました。集団的自衛権の行使容認という閣議決定がされたことです。これは「国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使」を「永久に放棄」した憲法第九条の精神をくつがえすものです。日本が武力の行使をすることになれば、国同士の戦争になることは避けられません。

 戦後69年にして憲法九条がこのような危機を迎えたことに、私は大変な不安と恐怖を覚えざるを得ません。現内閣が識者の意見も世論の反対をも顧みることなく閣議決定をした理由はどこにあるのか。それを思うと、与党横暴の裏に戦争・平和観に対する私たち自身の時代的変化があることを否めないのです。

 その変化とは一に戦争体験の風化です。今や戦争体験者はごく少数になりました。さらに戦争体験を語り継ぐ人も少なくなりつつあります。その結果として、私たちが戦争の愚かさと悲惨を忘れ、憲法によって守られてきた平和の貴さを見失っているのです。“平和ぼけ”とはこのことです。平和の有難さを忘れたところに今日の日本があるのです。

 仏教の根本は共生です。宇宙船地球号の平和、共生共存を願うのが仏教です。私たちの曹洞宗もお釈迦様の教えを守り、侵害も迫害もない平和な世界の実現を目指しています。そのためにも世界から高く評価されている憲法九条を守っていこうとしています。武力による威嚇、武力を行使することによる平和はあり得ないのです。

わが曹洞宗は、先の戦争に対する痛切な反省の下に「二度と過ちを犯すことはしない」と不戦の誓いを宣言していますが、私も宗門の一人として、また一宗教人として世界の平和を希求していきたいと思います。どうぞ皆さまもこの今だからこそ、思いを新たに平和の祈りを続けて下さるよう願ってやみません。
 


「空気のように、あることの大切さに気づかれなくなってしまった
    憲法9条を手放さないようにしよう」
         ~「憲法9条にノーベル平和賞を」実行委員会~


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