割れる裂ける №402

割れる裂ける
平成28年10月17日



 
 台風去って陽気一変、秋の涼しさになりました。あちこちにコスモスが風に揺れて咲いています。この花、日本の秋に相応しくまるで日本固有種のように思えますが、実はメキシコ原産、日本には明治時代に渡ってきたとは意外でした。花言葉が「調和」と聞けば、まさにその通り、日本の秋に調和したのだと思います。

 初めから余談になってしまいましたが、いつでしたか「花が笑う」ということを一番実感しやすいのが、コスモスではないかと申し上げたことがありましたね。実は先日、日清食品下関工場の観音様奉安二十周年祭でも法語の一句に「風に遊ぶ秋桜呵々として軽やかなり」と書きましたので「花が笑う」というお話をしたのです。

 で、その話というのが表題の「割れる裂ける」ということ。「花が笑う花が咲く」の「笑う咲く」は「割れる裂ける」が語源ではないかと申し上げたのです。これを一番イメージしやすいのが火山の噴火でありましょう。火山の噴火はマグマであれ水蒸気であれ、内に溜まったものが大地を割り裂いて噴き出たということですね。

 花も同じだと思います。ツボミに蓄えられた力が一気に割れて裂けて開いた状態、それを「花が咲く」というのでありましょう。「咲」の元々の字は「口」偏に「笑」。ですから、「咲」は、本来「咲く」ではなく「笑う」と読むのです。人が笑う、というのは、可笑しくて笑いたくなる感情が声になって口から噴き出たということですね。

 蓄えられた力が一気に放出されるというのは反面「解放」でもあります。本やレコードが発売されることを英語でリリース(release)と言いますが、まさにこの「解放」はリリースなのです。人の心、花のツボミに蓄えられた力が、一気に解放されるのが「笑い」であり「咲く」という現象を生むのです。

 実はこの「解放」は観音経に言う「解脱」でもあります。観音経には「皆得解脱」とか「即得解脱」とか何度も「解脱」という言葉が出てきますが、その解脱とは困難な状態から解放されることを言っているのです。どうぞ皆さまも大いに笑って咲いて苦しみや悲しみから解放されて下さい。

   世の中の 重荷降ろして 昼寝かな
            ~正岡子規~


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