まほうの言葉 №405

まほうの言葉
平成28年11月5日


 
 先日、友人のTさんから手紙を頂きました。Tさんは養護学校教員を早期退職してから染織の道一本、今では横浜のシルク博物館の染織展に毎回入賞されるほど実力ある作家になられました。しかし、私がさらにまた敬服するのは、Tさんが染織を教えながらずっと障害を持った人たちとの活動を続けておられることです。

 で、頂いた手紙というのも毎年しているという障害者と一緒の一泊二日アウトドア旅行記です。コメント入り写真ふんだんなA4用紙10枚に及ぶその旅行記は、作るのも大変だったと思いますが、読む方は「へえー、なるほど」とその状況を目の当たりにするように読ませて頂きました。その中に「まほうの言葉」があったのです。

 ことの話はこうです。初日のお楽しみの一つがサイクルスポーツセンターでの乗り物遊びだったそうですが、その中には当然ちょっと怖いものや運動能力を必要とするものもあるのだそうです。と、一行の一人Kさんが難しいうちに入るノッポサイクルに乗りたいと言ったのだそうです。はてここはどうするか、ですよね。

 思案一瞬、Tさんが「あれは腰が痛くなるよね。やめよう」と言うと、Kさんあっさり「また来年にする」と諦めてくれたというのです。この時Tさん「また来年は、すんなり気持ちを切り替える“まほうの言葉”かも」と思ったというのです。確かにそうだと思います。Kさんは自分から「また来年」と言って自分を納得させてくれたのですから。

 考えると、Kさんが自分に言った「また来年」という言葉が持つ最大の意味は「夢と希望」だと思います。来年にする、という言葉には「来年は乗りたい。きっと乗れるだろう」という夢と希望が含まれています。その夢と希望を確信することで今年はやめておくという譲歩が出来たに違いありません。この譲歩は敗北ではありません。

 Tさんの気づきで私も改めて人生における「まほうの言葉」の大切さを思いました。人誰しも苦しみや困難に遭遇しない人はありません。その時、人誰しもにKさんの「また来年」と同じような「まほうの言葉」があるはずです。どうぞ困難や苦しみから抜け出るご自身の「まほうの言葉」を探して下さい。


   ゆめのぞみ 胸に確かな この二つ
         笑顔と勇気の 湧き出す泉

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