まほうの言葉③ 「さすけね」№412

まほうの言葉③  「さすけね」
平成28年12月25日

 今年10月に亡くなった登山家、田部井淳子さんを送る会が先日19日、母校の昭和女子大学で行われ1400名もの方が集われたそうです。田部井さんと言えば,1975(昭和50)年に女性として初めてエベレスト登頂に成功し、その後、これも女性で初めて七大陸最高峰登頂者になった方であることは皆さまご存知と思います。

 福島県三春町出身の田部井さんは、あの東日本大震災のあと、若い人に復興の元気を出して貰おうと富士登山ボランティアを続けておられたそうですが、今年7月の富士登山が田部井さんの最後の登山になったということです。恐らくはその時も患っていたガンを押してのことであったかも知れません。そのお心に瞑目しかありません。

 田部井さんは登山とは何かと尋ねられると、決まったように「屋根の下ではない雄大な自然の中で生きていることを実感する」「一歩一歩はつらいけれど必ず終わる」と言われていたそうですが、幾度も雪崩に襲われ死の恐怖を体験した人の実感なのでありましょう。

 その田部井さんに田部井さんのまほうの言葉があることを知りました。それが表題の「さすけね」です。皆さんはこの言葉の意味がお分かりでしょうか。それをお教えする前にこの言葉がいつどんな中で田部井さんの口から発せられたのかを申し上げなければなりませんね。1985年と言いますから昭和60年のことです。
 
 この年、田部井さんは女性三人で旧ソ連パミールにある7000m級の三峰を一シーズンで完登する快挙を成し遂げましたが、この折の一峰目で相方の二人ともがへとへとになり、キャンプに着いても自分の靴さえ脱げない状態になってしまったのだそうです。この時、二人の面倒に当たった田部井さんの言葉が「さすけね」だったのです。

 「さすけね」とは「大丈夫。気にしないで」という意味の福島方言。「差支えない」が訛ったのです。この言葉に相方の二人はどんなに慰められ勇気づけられたでしょうか。その後無事、三峰登頂が出来たのもこの言葉のお蔭かも知れません。いい言葉ですね。「さすけね」。どうぞ皆さんもこのまほうの言葉で人を元気づけてあげて下さい。

  ほのぐれのごどは、さすけね。
        (no problem

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