寺の未来 №703

 寺の未来

令和4年11月8日

 「寺離れ」「檀家消滅」という言葉を耳にするようになってもう何年も経ちました。これと軌を一にする「墓じまい」という言葉は皆さんもよく聞いていることでありましょう。聞いているどころか実際に墓じまいをされた方も少なくないと思います。これらはみな寺の未来に直結している問題と言えます。

 私たち僧侶にとって上の問題は寺の存続に関わる切実な問題です。檀家さんの高齢化と同時に住民の減少による地域の衰退が上の問題の引き金になっています。過疎地であればあるほど、いま寺を支えてくれているのは8090代の方々でありましょう。その方々の後を継いでくれる若い人たちがいないのです。

 これから寺はどうなるのか。寺に未来はあるのか。これは寺だけの問題ではなく皆さんにとっても大きな問題ではないでしょうか。折りしも先達ての毎日新聞(4/9/29)に「お寺に未来はあるのか」と題して3人の識者がそれぞれの意見を述べている記事がありました。

 まず一人目。浄土真宗本願寺派の住職、水月昭道さんは「お坊さんは職業ではない。悲しみに寄り添う役割だ。民間企業のようにお寺を経営するという発想はない。いまの形で未来永劫続けるべきだとも思っていない」と言い、その根底に仏教の本質である「諸行無常観」があると言われます。

 二人目。「未来の住職塾」理事の松崎香織さんは寺の役割として「苦しみはなぜ生まれるのか。生きる意味は何なのかといった問いを深めるための舞台として非常に大きな可能性を感じている」と言い、これには住職の妻など女性たちが大切ではないかと言います。寺を2階建てに見立て1階は葬儀・法要の場に、2階は自己修養の場にという提言もされています。


 三人目、石井研士・国学院大教授の意見は悲観的でした。墓じまいや寺離れが進む一方の現状に加え2040年には全国で896もの自治体が消滅するという予測が現実化すれば全国の宗教法人176600余の35%の寺院や神社が消えてなくなるだろうと言います。否応なしに進む過疎化に見通しは暗いと言われるのです。 

 寺の未来。皆さんはどうお考えですか。よい知恵を下さい。



 諸行無常とは言いながら然りながら



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