「がんばれ~」考 №720

 「がんばれ~」考

令和5年3月1日

3月になりましたね。この春から初めて仕事に就く人、高校や大学に進学する人。その皆さん、門出に当って様々な思いをしていることと思います。もちろん、新しい世界への希望に胸を膨らませているでしょうし、その反面、仕事を覚えられるだろうかとかしっかり学べるだろうかという不安もあるに違いありません。

 そんな若い人たちを見ていて周囲の人たちはきっと「頑張ってね」「しっかりね」と声をかけてくれているだろうと思います。その「頑張ってね」という言葉を門出の若い皆さん方はどうお思いでしょうか。実はこの「頑張ってね」が人によっては逆効果になりかねないという話を聴いてびっくりしたことがあるのです。

 その「人によっては」の人は病気療養中の人とか心身共に苦しい状況にある人です。療養中の人や苦境にある人たちは頑張りすぎるほど頑張っている人たちでしょう。ですからその人たちが「頑張ってね」と言われると「これ以上頑張りようがないのにまだ頑張れというのか」と反感を覚えてしまうことがあるというのです。

 上の話を聴いた時、善意の言葉が善意ではなくなってしまうこと、言葉の力が逆になってしまうということに改めて言葉の難しさを感じさせられました。でもその時、もう一つの思いが浮かびました。「頑張ってね」は頑張れという命令的な意味よりも励ましの慣用語と考える方が妥当ではないかということです。

 会社であれ学校であれ、新しい世界に入っていく若い方々はそこで新しい人間関係を持つことになります。その人間関係の基本となるのが言葉でありましょう。時には上司や先輩からきつい言葉を貰うことがあるかも知れません。でもどうぞその時、反感に終わるのではなくそのきつい言葉は自分を育ててくれる励ましだと思って頂きたいのです。



 逆に言えば周囲の人に対して自分がどんな言葉を発していくかでもあります。言葉は人間です。言葉はその人自身です。暖かい言葉も冷たい言葉もその人自身です。どうぞそのつもりで暖かい言葉を発してよい人間関係をつくって下さい。私は若い人たちに心から言うよ。「がんばれ~。応援してるよ~。がんばれ~」


「愛語()く廻天の力あることを

 学すべきなり」

          道元禅師

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