さくら証書 No.130

平成24年3月4日


 さくら証書


 NHKラジオ深夜便をお聴きの方はご存知と思いますが、先日久しぶりにラジオをつけましたら「深夜便の歌」で大江千里・八神純子さん作詞・作曲、八神純子さん唄の「さくら証書」が流れていました。桜の花びらが舞う我が子の卒業式の日、過ごした日々を懐かしく思い出しながら、子の行く先を思う母の心情をしみじみと綴った歌です。

 私がこの歌に関心を持ったのはその歌詞でした。歌い出しが「生まれてくる時/子供たちは皆 父と母を選ぶのだと/いつか教えられた/それが本当なら/わたしたちのこと/選んで生まれてきてくれた事に“ありがとう”」となっているのです。皆さんは生まれてくる子が親を選ぶってお聴きになったことがあるでしょうか。

 実はこれはドイツの神秘学者ルドルフ・シュタイナー(1861~1925)が言っていることなのです。そう、シュタイナー学校の基を作った思想家です。その独自の哲学はいまも教育を初め医学、建築、農業等多様な場で実践されていますが、その根本にあるのが霊的人間観と言えましょう。人間は生死を繰り返すという輪廻転生を思想の根本としているのです。

 シュタイナーは言います。「私たちには、自分が負担をかけた人たち、自分に負担をかけた人たちがいますが、(死後)この人たちとの関係も魂の前に償いを求めて現れ、次の地上生活において再びその人たちと一緒に生きようと(中略)新しい地上生活の霊的原像を作り」、その「新しい地上生活入るために父親と母親から受ける物質成分に自分を結びつけます」と。

 つまり、私たちは自分の新しい地上生活の霊的原像を生きるため、「遺伝的な特徴とこの原像との間に親和力が見出せるような両親に惹(ひ)きつけられる」というのです。それが親を選ぶということなのです。この「さくら証書」の歌のように、我が子が自分達を親に選んで生まれて来たことに喜びを覚え、同時に子供が父母を慕って成長していくならば、その子供はまさにシュタイナーのいう「霊的原像」を実現させる人生を歩み始めたと言えるでありましょう。私たちは誰一人無目的に生まれてくることはないのです。

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