悉有仏性
立秋八月満天星 秋立つ空に星冴えて
一陣涼風渡院庭 涼しき風の吹く庭の
浴清光忽然正覚 月の光に思ふこと
一切万物宿精霊 あらゆるものに仏あり
立秋を過ぎましたが今年も相変わらず暑い日が続きます。ま、それも当然。立秋はまだ夏のさ中です。でもいつかも申し上げましたが、立春は冬のさ中、立秋は夏のさ中にあって春や秋が顔を覗かせるのです。私たちの世界はあらゆるもの、すべてが一瞬たりとも留まってはいません。常に変化し続けているのです。
季節も同じです。季節の変化を表わすものに四季があり二十四節季がありますが、さらには一年を72に分けた「七十二候」があります。もっと厳密に言えば一年365日一日ごとに変化し続けているのが季節でしょう。今まさに真夏にあってそこに秋の気配が生じているのが立秋なのです。それこそが無常なのです。
標題の「悉有仏性」は「しつうぶっしょう」と読みます。漢文読みすれば「悉(ことごと)く仏性あり」と読みますが、道元禅師はこれを「悉(しつ)有(う)」(ありとあらゆるもの)は「仏性(ぶっしょう)」(仏そのもの)であると読まれました。「仏性を持つ」のではなく「仏そのもの」だとおっしゃったのです。実に真理そのままの解釈ではないでしょうか。
つい先日未明、目を覚ますと庭に皓々と月の光が差していました。外に出ると涼しい風が吹いています。その月の光の中ですべてが静まりかえっています。私はふとこの「悉有仏性」という言葉を思い出しました。私たちを取り囲んでいる全てのものは仏そのものです。意味なく存在しているのではありません。仏を表わしているのです。
そうです。あなたも私も仏、なのです。
「秋立つ日詠める 秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞ驚かれぬる」
~藤原敏行~
0 件のコメント:
コメントを投稿