平成24年10月15日
のらネコ幻想
先達てのたより№158(イヌネコヒョウ)で娘の愛猫の話を紹介いたしましたが、あの後すぐ娘からそのネコがいなくなってしまったという連絡がありました。ネコは自分の死期が迫ると身を隠すことがあると言われますが、まさにそれを証明するかのように、娘たちの外出中忽然と姿を消したというのです。
むろん、娘は必死に探したそうです。ネコは水も餌もろくに取れない状態だったのですから歩ける距離はたかが知れていると、近所くまなく、そしてこんな遠くまでは来られまいというところまで探しまわったと言います。しかし、行方は遂に分からず、死んでしまったならせめて葬ってやりたいと探しまわった四日間は徒労に終わったそうです。
そのあと、娘は夢を見たそうです。その夢はこんな夢であったそうです。娘がネコ探しをしていると、普段見たこともないおばあさんがやってきて「ネコを探しているんじゃろう。そのネコなら心配ねぇ。天国へ行ったよ」と次のように話をしてくれたそうです。
「三日ぐれえ前のことじゃ。おらがここを通ると、向こうからよたよたのネコがやってきてあの橋の上にうずくまった。そしたらな、そのネコに向かってなんとも言えねえ暖かな光が近づいてな。そのネコを包み込んだと思うとすっと消えた。後にはそのネコも何にもおらんかった。思わず目を疑うようなことだったよ」
「おらはその時すべてが分かった。あのよたよたのネコはのらネコだ。ネコを包んだ光は母さんネコじゃ。あのネコはおめさんが飼っていたんじゃろ。だが、あのネコは死が迫ったとき自分がのらネコじゃったことを思い出してのらネコに戻ったんじゃ。だから母さんネコが迎えに来てくれたんじゃ」 そして、おばあさんは最後にこう言ったそうです。
「人間も動物も生きてるものはみんな生まれてきた本分を果たさなきゃいかん。本分を果たせば次の世がある。あのネコは最後にのらネコの本分を果たした。だから天国に行くことがでけたんじゃ。生きるってのは本分を果たすことだよ」
そう話終わったおばあさんはそのあとはもうどこにも見えなかったそうです。
ひかりは ありとあらゆるものを つらぬいて ながれました あらゆるものに 息を あたえました~「八木重吉」~
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