三無い主義 №91

平成23年6月12

三無い主義


(アプレフクシマ②)
 震災以後、私たちが求められているのは生活スタイルの見直しではないでしょうか。私たちがごく当たり前のこととして享受してきた明かりや熱、水道、スイッチ一つで沸く風呂やお湯。これらを私たちは文明のお蔭として何の疑いもなく受けて来ました。しかし、実はそれはそれらのエネルギーを作り出すための危険と隣り合わせでありました。

 私たちはこれからも今までと同じような生活を求めていくべきでしょうか。それとも新しいライフスタイルを作るべきでしょうか。新しいライフスタイルを求めるとすればどうすればよいのでしょうか。私はそのヒントが江戸時代、江戸庶民の暮らしにあるように思います。江戸時代と言えば、そう江戸学の大家、杉浦日向子さんに教えて頂きましょう。

 杉浦さんは「江戸っ子の基本は三無い。持たない、出世しない、悩まない」だと言います。そうですね。私たちは必要のないものまで持ちすぎていないでしょうか。まず持たないことが第一です。次の出世しないは消極的のようにも思いますが、これを「万事控え目」と取れば頷けませんか。江戸では敢えて主張しないものに価値を見出していたんですね。。そして、悩まないは文字通りです。常に明るい気持ちを持つことが大事なことは言うまでもありません。
 
杉浦さんはまた江戸の暮らしを「二百五十年続いた泰平の世は言うならば低生産、低消費、低成長の長期安定社会。モノが少なく江戸の庶民はみんなが貧乏。衣食住はいつも八分目で、足りない二分は自分で工夫する。他のもので代用するか、誰かから借りるか、我慢する」から「自らの才覚でその場をしのいだという充実感があったのでしょうね」と言われます。
 

 江戸時代は自然を基本にした循環型社会でした。その中で人びとは不自由と貧しさを自分の才覚でしのぐことを楽しんで生きていましたが、これこそが私たちがこれからのライフスタイルとして考えることではないでしょうか。もったいない精神で全てを大事に、みんな仲良く助け合って明るく生きることを江戸庶民に学びましょう。
 


   穴を出て穴に入るまで世の中に
        ととん頓着せずに楽しめ
           ~深井志道軒~

0 件のコメント:

コメントを投稿